想像の翼

意外なことに、翼が大きければいい奴とは限らない。先ほど例に出した、すごい翼の生えてる仕事の出来るアイデアマン。悪知恵も働くというのか、ライバルの不利になる噂を流して何人かを左遷させている。

でも、どれだけ根性悪くてもいいから、僕も、バッサバッサの翼が欲しい。喉から手が出るほど、欲しい。
けれど僕には翼が生えていないんだ。風呂上がりに毎日、鏡で背中を確かめるけれども、本当に何も無い。
どんな人でも、瘤ほどの翼でも生えているというのに。

学生時代から7年間、僕は小説を書いていて、いくつもの新人賞に応募している。でも、よくて一次通過だ。

僕の友人に、弓削直人という男がいる。
直人はものすごい読書家で、月に40冊は本を読まないと脳に栄養が回らないと言う。彼の読書は現代小説・歴史物・ノンフィクション・ライトノベル・古典・詩・戯曲……文学と名の付くあらゆるジャンルを網羅しており、何を質問しても正確な答えが返ってくる。