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ジゼルは樫木所長にも抱かれたらしい。
「でも社長も所長も、あまりよくなかった」
電話の向こう側でジゼルのふくれっ面が目に浮かぶようだ。
「先輩みたいな優しさがまったくないの、オラオラ系って感じかな」
ジゼルは本当に声以外は男の娘度がみるまに上がっていった。
新橋オフィスでは、女性社員には受け入れられているものの、ほとんどを占める男性社員には用がなければ誰も口をきいてくれなかったと。そして好気の眼で見つめられるだけ……。
ただ、ある意味新橋のオフィスに呼ばれたのはよかったのかもしれない。我孫子サテライト・オフィスだったら松田の爺がいる。
それにしてもジゼルを見ていると、覚悟さえ決まってしまえば、強制女装で本社オフィスの晒し者にされるなど、意味がないようにも思えた。
それがあたりまえの風景となってしまったら、強制女装の意味がない。
社長も所長もそこらあたりは計算ずみだったのかもしれない。実際には一ヶ月も経たずにジゼルと俺は我孫子サテライト・オフィスに戻ったからだ。
ただ、俺に対して余所者意識があったとはいえ、本社勤務の連中の作業スキルは高かった。そこらをいくつか盗んできたので我孫子でも役に立つだろう。
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