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「だからあんたの責任なんか信用できねえんだよ! そう言って本当にできるのか」
再び松田の爺の声が響く。
と、給湯室のドアが開き、早足で正之が飛び出してきた。
そしてそのまま、パソコンもシャットダウンせずにバッグを持って帰ってしまった。
「なんだおめえらその目つきは」
松田の爺がまた怒鳴った。
ちっ、と舌打ちすると松田は吐き捨てるように言った。
「またこっちが悪者扱いか」
翌日、正之は仕事を休んでしまった。樫木所長がまず電話でとりあえず落ち着いたらしい正之を慰め、仕事の件で俺に内線を回してくれた。
──大丈夫か、睦月?
ええ、はい、もう大丈夫です、と彼は済まなそうに言った。
「『ポポイ!』の原稿の件はもうしわけありません」
──気にするな、っていうほうが無理かもしれないが、気にするな。原稿なら、まだ慣れていないおまえのためにそんなたくさん抱え込ませてないから、俺が片付けておいた。
「すみません、明日からは仕事出ますから」
言葉どおり、正之はあくる日出社してきた。
忌々しそうな眼で、仕事の打ち合わせをする正之と俺を松田の爺は見つめていた。
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