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「この『ポポイ!』の最終稿やったのは誰だ!」
我孫子サテライト・オフィスに電話がかかり、樫木所長が出て、顔を真っ青にしている。
受話器を叩きつけるように切って、所長は怒鳴った。
もう正之も慣れてけっこうな仕事を任すことができる、そのぐらいの時間は過ぎていた。
よく言うように、そういうときがもっとも危険というか、最終稿で信じられないミスがあったのだ。
ゲーム雑誌「ポポイ!」の最新号が発売されてしまってから編集部が気づいたミスで、ある三段組のページに、出力した印画紙が貼り間違いされていたのだ。
本来なら、印刷直前の印画紙の、一段目に張るべき印画紙を、最終校正のときに間違えて二段目に貼り付けてしまった。つまり、ほぼ同一の文章が、誌面の一段目と二番目にという、誌面を壊すミスをやってしまったのだった。
この雑誌の班の班長は俺だ。
まずは、すみません、と樫木所長に謝罪した。
「上林くん、誰が作業を担当したのか訊いているんだ、きみの作業責任についてはあとでいい」
……正之が全身を震わせている。
いやな予感はしたが、的中してしまった。
もちろん、最終校正をさらに最終的にチェックするのは「ポポイ!」編集部の責任である。だが、編集部はうちの印刷前工程のお客様であり、問題を問えない。
「編集部からは、一千万円以上の損害とも言ってきている。上林くんも最終校正しなかったのか!」
──もうしわけございません。
と俺は所長に謝罪した。
気がつけば俺も身体が震えていた。
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