6-2

1/1
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ

6-2

 アパートから新橋までは大変なので、さすがにメディア・フロンティア本社でもこの講座期間内の宿、安いビジネスホテルなどは都合してもらえる。  初日、一人欠席者がいた。  どうかするとパソコンの使い方から教えないといけない側面もあるので、初日から欠席とはもしかしたらそれを見越してなのかもしれないと思ったのだが、翌日、俺は驚いた。 「昨日は欠席してしまってすみません」  と、男にしてはけっこう背の低い生徒が早めにやってきて詫びを入れてきた。俺はレンタル・オフィスの掃除をしていたのをやめ、昨日のとくに重要な点を彼に教えてやった。  すでにパソコンには慣れているようで、大したことを教えずにも済んだのだが、彼、睦月(むつき)正之(まさゆき)の顔つきを見て驚いた。  まだ歳は二十歳前後、かわいらしい顔立ちをしている。俺がこんなふうに睦月のことを書くのも、当然、男の娘になったらさぞかし映えるだろうなと思ったからだった。  二重(ふたえ)(まつげ)が長く、なによりこれは俺が高校生だったころからの経験で書くのだが、微かに眼がいつも潤み気味なのは、すでにへの素質があることを物語っている。  その日、講義を終え、俺は睦月を適当な居酒屋へ誘った。俺自身あんまり呑めないほうだから、気は遣わなくていいよ、と。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!