小学生アキちゃん登場。なんでも身の下話が得意だそうで… ③

1/1
前へ
/29ページ
次へ

小学生アキちゃん登場。なんでも身の下話が得意だそうで… ③

 顔を上げて話そうとする恭平の言葉を、アキが遮った。 「あ! そうそう、いい忘れたけど、ウチのお父ちゃんから 『お兄ちゃんにおうたら、ありがとうって、ゆうといてな』  と、言われてんねん。ありがとう! お兄ちゃん」 「ありがとう…て、俺、アキちゃんお父ちゃんなんかしてあげたかな? 」 「このまえ、ウチにお父ちゃんにバナナ味のタバコの作り方、教えてくれたやんか」 「あーっ!! 」 「あの日以来、ウチのお父ちゃん、うれしそうにスーパーでバナナをこうてきては、皮をむいてベランダで干してな、 『これがポールマカートニーの味か』  なんて言いながら毎日毎日できた粉末を、葉巻につめて、ベランダでイエスタデイを歌いながら吸ってんねん」 「犯人はアキちゃんのお父ちゃんか! 」 「犯人って、お父ちゃん何もしてへんよ。ただ、バナナ味のたばこ、ベランダで吸っただけやん」 「それがあかんねん。そのせいで、俺は宏美と別れるはめになったんや」 「別れたって、お兄ちゃん、宏美お姉ちゃんにふられたん? 」 「それも、これも、宏美の洗濯物に、アキちゃんのお父ちゃんの吸ったバナナ味のタバコの臭いが、ついていたからや! そうや、今ならまだ間に合うかもしれへん。アキちゃん! 」 「なに? 」 「お願いやから宏美に 『タバコはウチのお父ちゃんが吸ったんや。お兄ちゃんは約束破ってない、潔白やで! 』  て、ゆうてくれへんか」 「お兄ちゃん、悪いけど、それは無駄やな」 「無駄って? 」 「女はタバコの煙ぐらいで部屋を出ていったりせえへんよ」 「ええ! 」 「単に、出て行く口実やな。うん、うん。そうに違いない」 「そんなん、アキちゃん。俺、どうしたらええねん」 「あきらめ! 」 「そんなん、あきらめやって…なんの相談にもなってないやないか。それはちょっと、ひどいんでないかい」 「だってな、宏美姉ちゃんとお兄ちゃんじゃ、どう見ても似合えへんもん」 「なんでや…」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加