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児童虐待は人生に大きな影を落とす ⑤
――回想シーン――
カンカンカンっと踏切の音、歩く人の話し声や足音など、様々な駅前の雑踏の中を、駅に向かって急ぎ足で歩く宏美がいた。
「ああ、遅くなちゃった。まだ電車あるかしら。あれ? あなたは…」
「やあ! 」
「山田さん! うそ、まだ待ってたの」
「よかった君に会えて。もしかしたら、待ち合わせの場所でも間違えたのかと思って心配してたんだ」
「ごめんなさい、遅れちゃって」
「いいんだよ。デートの約束は今日なんだから、今日中に来てくれればそれでいいさ」
ゴーン、ゴーン・・・
「あ、十二時の鐘だ。ぎりぎりセーフだったね」
「ええ…」
「もうこんな時間だからどこにもいけないね」
「そうね、じゃあ、さよな…」
「けど、渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの? 」
「ここでよかったら受け取ってくれる? 」
「なに? 」
「これさ」
恭平はポケットから小さな箱を取り出すと、宏美に手渡した。
「わあ、オルゴールね。私、好きなの。聴いてみてもいい」
「どうぞ」
宏美、オルゴールのふたを開けると、オルゴールがなりだした。
「この曲は? 」
「尾崎豊のアイ・ラブ・ユウ」
「え? 」
「僕は入学してからずっと、君を見つめていた。そして、これからもずっと君を見つめていたい…いいだろう」
「山田さん…」
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