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佐竹が生まれ育った月島は東京都中央区、なだらかな街並みに歩く度香るもんじゃ焼きの芳しい匂い。家路を急ぐまでの道のりで一体何軒粉物を嗅いだだろうか。 住宅街の角を曲がって自宅の外壁が見える。白を基調とした一軒家、この時間帯両親は仕事に出かけていた。ポケットから鍵を抜いて黒い門の前に立ち、佐竹は言った。 「何してんの。」 「遅いね颯太。寒いんだから中に入れてよ。」 門の前でしゃがみ込む福瀬は日に焼けた両手に息を吹きかけて言った。彼女の自宅はここから徒歩6秒のところにある。短くため息をついて佐竹は門を開けた。
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