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有楽町線の清瀬行に乗り込み、永田町駅で半蔵門線に乗り換える。中央林間行に体を揺らして渋谷に辿り着いた。冬の日曜日、行き交う人々は皆分厚い服装に身を包んでいる。おそらく11月から飾られているであろうイルミネーションが昼間でも虹色に輝いていた。全く別の宗教の祝い事をここまで盛り上げるのだから、日本は寛容な民族である。 渋谷駅から徒歩10分、複合商業施設の裏に建ち並ぶ飲食店を掻き分けて坂を下っていく。ミツクビのポップアップストアは大勢の男女の列に囲まれていた。予想よりも長蛇の列に驚いてしまったものの、早川のためとあらば苦にならないと感じている。最後尾に並び、携帯を抜く。ポップアップストアのサイトを立ち上げて商品一覧を眺めた。狗城院天晴はかなり人気のキャラクターで、グッズの種類も多い。スクロールしながら考えた。ハンカチ、ぬいぐるみ、キーホルダー、一体どれを選べば早川は喜ぶのだろう。一番下へスクロールした時に佐竹は指を止めた。 ミツクビというアニメは侍が出てくるだけあって、キャラクターそれぞれに名前の付いた刀が登場する。狗城院の愛刀は虎嗄というもので、刀身が赤と黒に彩られていた。佐竹が見つけたのはその刀が小さくあしらわれたネックレスだった。これなら普段使いも可能である。ポップアップストア内で高価ではあるものの、早川が喜ぶ可能性は高い。資金は余裕を持って多めに持ってきている。携帯を仕舞って佐竹は彼女にネックレスを渡すシーンを思い浮かべた。
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