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 歯ぁ立てるなよ、と髪を掴まれたこと。    剥がされ、浅岡がしたようにまさぐられたこと。    うわ、べっとべと、と楽しげに引っ張られたこと。    よくも正体を知らないもので頬を叩かれたこと。    白濁した液を飲まされたこと。    部屋の中心にはいつも、なされるがままに服従するあたしの姿がある。    おぞましい。    知らぬ間にあたしは膝頭を付いていた。汚いコンクリートに支える手。    一つ一つを覚えている。今すぐ記憶喪失になりたい。    誰か、あたしを殺してはくれないか。    叫ぶこと一つ出来なかった自分が情けない。    あいつらに抵抗出来なかった己が呪わしい。    女であるこのからだが疎ましい。   「うっ……」    喉の気管が狭まる。暗まる視界の奥で、白んだ単語が浮かんでくる。  ――フラッシュバック。
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