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少年ミィの物語21「喧嘩」
ミィは困惑した。
雅人が難解なことを言ったからだ。
「康二と遊んでるとろくなことにならないぞ」
ミィは、転入してきて一番初めに話をしたのが、
康二だった。
しかし、康二はなんとなく皆から嫌われていた。
そこへ割って入ってきたのが雅人だった。
雅人は忠告のつもりだったのかもしれない。
確かに康二と遊んでいて、些細なことから喧嘩になった。
だから、もう康二と遊ぶのをやめろと言いたかったのかもしれなかった。
康二は団地の踊り場からこちらを見ていた。
「康二とはもう遊ぶのをやめた方がいいぞ」
雅人はさらに続けた。
「そう言われてもなぁ・・・」
ミィは心が揺らいだ。
自分の本当の気持ちがわからなかった。
「そうだ。あそこで見てる康二に言ってやれ」
「え?なんて?」
ミィは雅人に聞き返した。
「康二のバカヤローってな」
ミィは雅人の顔を見た。
雅人は真顔だった。
ミィは、考えた。
ミィは少し間を空けて、こちらを見ている康二に向かって叫んだ。
「康二のバカヤロー」
普段大声を出し慣れていないミィの声は後半は掠れていた。
康二にまで声が届いたのか、康二は踊り場から顔を引っ込めた。
「はははは」
雅人は隣で笑っていた。
ミィは心の中にずっしりとおもりが乗っかったような気がした。
自分は本当に康二にこんなことを言いたかったのだろうか。
なんとなく雅人に流されて叫んだことに、
疑問を感じた。
本当は康二と仲直りをしたかったんじゃなかったのか・・・。
ミィはいつまでも答えが出なかった。
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