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少年ミィの物語1「川べりの蛙」
ミィは目を見開いた。
典行がつかまえた蛙を川べり目掛けて投げつけたからだ。
ミィは典行の行動を見てぎょっとした。
蛙は川べりにぶつかり「ゲェェ」という叫び声をあげた。
可哀想に。
蛙は死んでしまったのだろうか?
ミィは典行の表情をうかがった。
典行はうつむきがちで表情が見えなかった。
ミィは心の中が落ち着かなかった。
蛙の叫び声がまだ、耳の中に残る。
「蛙がかわいそうだよ」ミィは典行に言った。
典行の隣にいる知明が足元にいる蛙をまた一匹捕まえる。
「ミィは保健係だからそういうこと言うんだよ」
知明が言う。そうなのか?保健係でないとむやみに蛙をとって、川べりに投げつけても可哀想とは思わないのだろうか。
ミィは知明の言葉が正しいとは思えなかった。
「ミィもやりなよ」典行がニヤニヤして言った。
蛙が一匹ちらっとこちらを見たような気がした。
ミィは足元の蛙を一匹捕まえる。
蛙をじっと見た。
蛙は何も知らず遠くの山を見ているようだった。
ミィは目を瞑った。
そして、蛙を川べりに投げつけた。
蛙は川べりにぶつかりやっぱり「ゲェェ」という叫び声をあげた。
その瞬間ミィの心の中に泥水のようなものが流れ込んだ。
悲しかった。保健係かどうかは関係ない。
小さな生き物が自分の手で死んでしまうことが耐えられなかった。
ミィは典行と知明を見た。
典行と知明は喜んでいるでも悲しんでいるでもない、
ただ、蛙を投げることに一生懸命な表情をしていた。
ミィはそのことが一番悲しかった。
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