消去法の末に……

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最後にアフロディーテ。三柱の中では間違いなく一番美しい、見ただけで思わず「クラっと」立ち眩みがするぐらいに美しい。年齢こそわからないが二柱の中間…… いや、最年少かも知れない、年齢の判断がつかない(実は三柱の中では最年長)、年齢なぞ関係ないぐらいに美しいと言う印象を受けた。髪の毛も離れていながらも黄金の美しいウェイブヘアーから薔薇の香りが漂ってくる。風に揺れる服も白磁のように輝き美しい、何より日に透けて裸のシルエットが見えるのだが、それすらも美しい。修飾の言葉なぞいらない、何もかもが美しいとしか言いようがない。パリスの語彙は「美しい」のみになっていた。 アフロディーテは美麗かつ華麗なステップを踏みながらパリスの元へと近づく、アフロディーテは芳しい薔薇の香りを纏わせながらパリスの全身を人差し指で舐めるように撫でる。首筋から頬に人差し指が移ったところで、耳に口づけをするように彼女は囁いた。 「私を選べば、人間界で一番美しい女性と結婚させてあげるわ」 アフロディーテは自分の美しさに絶対的な自信を持っていた。他の二柱なぞ歯牙にもかける気はない。パリスだって同じような美しさを持つ三柱から一柱を選べと言われても迷わずにあたしを選ぶだろう。だが、あの二柱には「権力」と「勝利」を与える力がある。それを付加価値にされたらパリスの心は揺らぐに違いない。アフロディーテは二柱の女神と同じく賄賂を与えることにした。アフロディーテは愛と美の女神。羊飼いに愛を与えることなぞ容易いこと。
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