消去法の末に……

3/11
前へ
/11ページ
次へ
 大神ゼウスは未だに公正な判断が出来るものを探していた。オリュンポスの神々では正直なところ、公正な判断が出来るものは存在しない。ヘラは大神の后として選ぶ率も高いだろうが、何より選ばないと後が五月蝿そう。こんな理由で選ぶとなれば、それは最早公正とは言えない。 オリュンポス十二神も三女神とは何かしらの関連があり、公正な判断が出来るとは思えない。ポセイドンとアレスはアテナと因縁があり、アポロンとデュオニソスはヘラと因縁があり、ヘパイストスは三女神ともに最悪の因縁があり、ヘルメスに至っては因縁こそないものの愉快犯的に楽しんでいる節すらある。いっそのこと、オリュンポス十二神の女神に頼もうかと思ったが、女神も女神で我が強いものばかりで「あの三人より美しいのは私です!」と言うものだから誰が美しいかを選んでくれと言うことも出来ない。 その他の神々や精霊に頼むことも考えたが、この大神ゼウスの后であるヘラを怒らせると怖いことを知っている故に、ヘラが有利になってしまう。これでは到底公正な判定とは言えない。 ゼウスはアテナが生まれる時と同じように頭を痛め抱えた。貧乏くじを引いたものだと考えながら流れる雲の上より人間界を眺めていた。すると、ゼウスの頭の中に雷霆が走る。いっそのこと中立な立場の人間に任せてはどうだろうかと閃いたのだった。 さて、中立な立場な人間と言われても誰を選べばいいのだろうか。ゼウスは人間界を見て回るが、ヘラの信仰が強い地域、アテナの信仰が強い地域、アフロディーテの信仰が強い地域が綺麗に三分割されており、どこの地域の人間を選んでも誰か一柱が有利になってしまう。これでは公正な判定は出来ない。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加