消去法の末に……

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次にアテナ。三柱の中では一番若く、顔も凛々しく整っており、細身ながらも筋骨隆々、美しい女性アスリートのような印象をパリスは見受けた。髪の毛は大きな前立てのついた兜を被っているせいで見えないから判断がつかない。 しかし、お召し物のセンスがヤバい。鎧に大量の蛇をつけるなんて不気味としか思えない。作り物ではなく本物の蛇をつけるなんていい趣味をしているものだ。何頭の蛇を殺したか知らないけど御愁傷様としか思えない。それに手持ちの盾だ、建物の魔除けの瓦みたいな意匠しやがって…… 言っては悪いが美しいとは思えない。本人が美しくても蛇の鎧と不気味な盾でマイナス評価だよ! 知性の女神なら蛇がうにょにょとした鎧見せつけられたらどんな印象を持つか分かりそうなものなのに。 アテナは縮地を思わせる一足飛びでパリスの元へと踏み込んだ。そして、パリスに凛々しい声で耳打ちをする。 「私を選んでくれたら、全ての(いくさ)に勝たせてやろう」 アテナは自分の美しさに絶対的な自信を持っていた、だが、それは他の二柱も同じで、自分に勝るとも劣らない美しさを持っている、そこは認めなくてはいけない。パリスだって同じような美しさを持つ三柱から一柱を選べと言われてもきっと迷うに違いない。アテナは賄賂を与えることにした。アテナは知性と戦いの女神。戦力と知力はこの三柱の中で一番持っている。羊飼いを百戦錬磨の大将軍にすることも容易い。
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