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 その日は朝からシトシトと雨が降っていた。朝の掃除を終えた私は、コートを羽織り手を濡らしながら棚植えのハーブを摘んでいた。  私のすぐ後ろから「おはよう」と声がかかって、慌てて振り向くと、レイフさまがいらした。 「おはようございます。レイフ様」 「こんな雨の中でもハーブを摘んでいるの? 」  傘の中に入れられて、レイフ様が近い。後ずさって傘から出ようとすると、レイフ様が歩み出てまた傘の中に入れられる。 「雨用のコートを羽織っていますから。ハーブはキッチンに置いておけばガーランが料理に使うと思うので」 「それなら、たまには君の入れるハーブティーが飲みたいな。雨の日もすっきりとした気分になるだろうから」 「アンに頼みますね」 「君ほど上手に淹れられる者はいないだろう? 育ててくれた人に淹れられた方が、ハーブも喜ぶんじゃないかな? 」  にっこりと優しい笑顔を向けられて、私の心が弾んでしまう。このお屋敷に来た初めの頃は、ハーブティーを時々レイフ様にお出しさせていただいていたけれど、アンに淹れ方を教えてからは私はそれを避けていた。 「ティアに僕は嫌われているのかな。ここに来てから僕を避けているように思えて。おばあ様のお話が出来る唯一の友人だと思っているのに」 「決してその様なことは‥‥‥」 「そうなのかな」と、レイフ様は私を傘に入れながら、ハーブティー用にとハーブを丁寧に摘み始めた。私の持つ籠にハーブを入れて指についた香を嗅ぐと「久しぶりに摘んだけど、懐かしいね。昔みたいだ」とマリア様と私の三人で過ごした記憶を懐かしんだ。  その顔がとても麗しくて、ジッと眺めてしまう。目が合って、慌てて目を伏せた。  あの頃はとても楽しくて、避暑に訪れるレイフ様と過ごすのがとても幸せだった。その時から、夏がとても待ち遠しかったはずなのに。
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