お父さんの種

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 気もそぞろなまま授業をこなし、帰りの会が終わるやいなや速攻で家に帰った。  コップにヌッコリョッケ――というか猫だと思う――の毛をひとつまみと水道水を入れ、アパートの裏に向かう。 「あっ」  一センチほどの真っ白い芽が二本、ちょろりと土から顔を出していた。  無事発芽したことが嬉しくて、僕はくふくふと笑った。 「僕がお父さんのママになって大事に育ててあげるからね。立派なお父さんになるんだよ」  僕はママがやったように芽の上にばしゃりとコップの水をあけた。
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