見えない何か。

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声も出せないまま、鍵穴に差し込んだ鍵を回して、部屋に逃げ込もうとした瞬間、今度は腰の上辺りに鈍い痛みとドン!という音が聴こえた。 ドアノブを回して倒れ込む様に部屋に入り、急いで起き上がり座り込んだままの状態でドアを閉めた。 玄関に座り込み、暫くドアを抑えていた。 誰かがドアの外のいる気配はない。 当たり前だ。 振り返ったそこには誰もいなかった。 「なに?………やだ。なに?」 ガタガタ震えて涙が出て来た。 暫く靴も履いたまま、そこから動けなかった。 完全に腰が抜けていた。 涙を拭き、やっとの思いで立ち上がろうとすると、背中に強く痛みが走った。 あの時、痛みが走ったのを思い出した。 洋服は汚れてもいなかった。 怖くて嫌だけど、シャワーに入る。 五分もしないで上がり、洗面所の鏡で背中を見た。 背中に痛みはもうなくて、あの痛みは何だったのかと思いながら振り返る。 よく見えない…でも何かがある。 手鏡を取りに行き、もう一度見る。 手が震えた。 身体全体が震えた。 腰の五センチほど上、真ん中より少し左寄り、縦線に三センチ位、真ん中が太めで上と下に行くほど細くなってる。 そういう形の痣の様な物が付いていた。 まるでそういう形の棒か何かで殴られたみたいな痕。 それを見た瞬間、ゾッとした。 (この部屋…なんだろうか?) 急に部屋にいるのも怖く感じたが、今、あのドアの外に出るのも怖かった。 その日は毛布に包まり、テレビを付けたままうとうとしただけだった。
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