見えない何か。

3/5

185人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
翌日、大学に行く為に恐る恐るドアを開けた。 顔を出してキョロキョロと辺りを見ていると、右隣のドアが開いて、挨拶をしてくれた男性が出て来た。 「こんにちは。………どうかしたの?」 雪絵の様子に不思議顔を向ける。 「あ、いえ……。こんな時間に会うなんて……。」 人がいる事にほっとして部屋を出て鍵を掛けた。 「今日ね、休みなんだ。今から昼飯食べに行こうと思って。大学?」 「はい。」 「いってらっしゃい。じゃあ。」 と、先を歩き出した男性を見て、思いついて後を追った。 階段の途中で声を掛けた。 「あの!すみません、お聞きしたい事が…。」 「俺?」 「はい!あ、ご迷惑でなければご一緒しても良いですか?お話をお聞きする代わりにご馳走させていただきますから…。」 「大学、時間いいの?」 「大丈夫です!」 「じゃあ、まぁ、どうぞ?この先の喫茶店だけどいい?」 「はい。すみません。」 講義をサボり、隣人の昼食に同行した。 「真下(ました)幸俊(ゆきとし)です。取り敢えず自己紹介?まぁ、聞きたい事ってそれじゃないよね。」 注文し終えると、笑顔で言い雪絵を見ていた。 「すみません、急に。あ、河田雪絵です。知ってますね…。」 乾いた笑顔で笑うと真下は、心配そうな顔をした。 「河田さん、下の名前、ゆきえ、なんですね。偶然だね?「ゆき」が一緒。」 「ほんと…ですね。」 返事をしてから話していいか悩んでいると、注文したアイスティーとアイスコーヒー、真下のナポリタンが運ばれた。 「ご馳走になるんだから、なんでも聞いてよ?」 そう言われて少し楽になり、口を開いた。 「あの、真下さんはいつからあのアパートにお住まいですか?」 「えーっと、三年、あ、四年か。二年毎に更新だから、今年更新葉書来てた。」 「私の部屋、前の人ってどんな方がご存知ですか?その…病気とか事故とか?」 「うん?事故物件疑ってる?」 ズバッと聞かれて下を向いた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

185人が本棚に入れています
本棚に追加