大学二年

1/5
前へ
/36ページ
次へ

大学二年

誕生日のその出来事は忘れることは出来ず、ただ、初めてお酒を飲み酔っていたのでは、と相談した友人にも言われた。 「逃げてって、他の言葉と間違えたのかもよ?」 けらけら笑われて言われると、そんな気もして来る。 「あんまり考え込まない方がいいよ?それからは何もないんでしょう?」 聞かれて頷く。 そう、その誕生日の電話以来、何もない。 季節は12月になったが、部屋の前で鞄から鍵を出しても、ファスナーを開けた小さな内ポケットの中に鍵はちゃんとあるし、あの番号からの電話も鳴らない。 いつしか雪絵は少しずつ警戒をしなくなり、平穏な日常が戻った。 二月になり、バイトに出ようとした日曜日。 部屋を出ると、声を掛けられた。 「すみません〜。後ろ通ります。ごめんなさい。」 二人組の男性が大きな家電を運んでいた。 (引っ越し?) 左隣の部屋で奥だから覗きに行くわけにも行かなくて、気にしながら階段に向かうと、そこで引っ越し業者の男性とすれ違う。 階段を降りて、停められているトラックを見た。 乗せられている荷物は華やかな感じで、女性だと思った。 (まさか何かあったのかな?私が何もなくなったから、隣に?だから引っ越し?) 「なぁに考えてるの?」 「っひっ!!」 「……なんて声出すの?俺、真下!」 肩を叩かれてビクッとして引いた声を出して振り向くと、右隣の住人、真下がいた。 「また変な事考えてた?」 と聞かれて、真下には相談した事もあるので、考えた事を素直に話した。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加