大学二年

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「つまり河田さんは不思議な現象が何にもなくなったから、それが隣に移って、引っ越しを決めたんじゃないかと思ったと。」 「まぁ…。」 後ろで引っ越し業者が荷物を運ぶ中、こそこそ立ち話をする。 「うーん、それで行くと、また君に戻って来るって事?」 真下が考えながら言い、怖くなり無言で真下を見つめた。 「行く?付き合うよ?」 「えっ?何処に?」 「不動産屋、このアパートの管理任されてる、車出すよ?お隣が怖い目にあってそれを素直に話しているとは思えないけど、様子は分かるでしょう?不動産屋の様子でも嘘言ってるかも分かる。一緒に行くよ?」 「い、今から?」 喉の奥から言葉が出た気がした。 「いいよ?でも河田さん、出掛けるところでしょ?大丈夫なの?」 「あ……。」 バイトに行く所で少し考えたが、平穏な生活の方が大事だと思い、気になる事を優先させた。 真下の車に乗り、不動産管理会社まで一緒に行ってもらった。 住んでいるアパートの名前を言うと不思議な顔をされたが、同じアパートの住人が二人来た事で奥の部屋に通してくれた。 一人で来ていたら店先で数分話を聞いて、笑われて終わりだったかもと思うと、真下に感謝した。 「隣の人が引っ越し…あぁ〜、はいはい。」 話は真下が切り出してくれて、それを聞いた管理会社の人がファイルの様な物を後ろの棚に取りに行った。 「ええ、今日、退去ですね。どうかされましたか?引っ越しで何か壊されたとかですか?」 ソファに座り直して、ファイルを見ていた顔を上げた。 「いえ、どうしてかなって?急な気がしたので、何か出たとか?」 笑いながら冗談ぽく手を付けて真下が話すと、相手も笑いながら返して来た。 「ははっ、止めて下さいよぉ〜。変な噂が出たら借り手が居なくなっちゃいますよ。普通に就職が決まっての引っ越しですよ?あなたと同じでね?学校違いますけど学生さんだったので、三月に卒業、就職先も決まってその近くに転居です。えっ?何かありました?」 雪絵の方を見て話して、雪絵が大きくため息を吐いたので、男性も顔色を変えて訊き返した。 「あ、……いえ。」 雪絵は口籠もり何も言えなくなる。 それを見た真下が笑顔で話しかけた。 「いえいえ、最近、見掛けない人がうろうろしてて彼女少し怖がってて、それで話を聞きに。隣の女性がストーカーとかに付き纏われていたら、そいつだって事になるし、何もないならいいんですよ。良かった、安心だね。」 男性に向けて話してから、真下は横に座る雪絵を見て笑顔を見せる。 「はい。きっと気のせいですね。」 と雪絵も笑って見せた。
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