二ヶ月後、八月

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少し遠い場所だった為、解散してアパートに着いたのは二十三時に近かった。 明日は土曜日だからまぁいいか、と思いながらの参加でもあった。 朝からの講義もない、バイトも昼過ぎからだった。 (ゆっくり寝てられる。) 玄関前で考えながら鍵を探す。 「あれ?また………。どこぉ?」 お酒はまだ二十歳前で飲めないから酔ってはいない。 いつもの小さなファスナー付きの場所に鍵がない。 鍵だけは絶対失くさない様に、いつもこのファスナー付きの場所にきちんと入れてファスナーを閉めていた。 途中で開ける事はない。 (あれ?………どこ?穴でもあいて……ないな。) おかしいと思いながら鞄の中を探していると、強い風が吹いた。 「きゃ!!」 左からの風に身を捻り、足を踏ん張った。 鞄をぎゅっと力強く握る。 次の瞬間、足がヒューヒューと寒く感じた。 ふと、下に目を向ける。 何が起こったか分からずに暫く停止。 「え?何これ……。」 お気に入りのプリーツスカートは膝上の辺りから左側から真ん中にかけて真横にスッパリと切れていた。 「ええ?!嘘?これ……かまいたち?」 慌てて鞄を探すと、ファスナー付きの中に鍵がある。 (ええーー!?なんでぇ?) 「もう!」 鍵を急いで開けて部屋に入る。 入る時にも強風が吹いた。 部屋に入り、スカートを広げて見ながらテレビを付けた。 二十三時のニュースを流していて、天気予報が流れて、丁度この辺りの地域に強風警報が出ていた。 「あ〜あ、かまいたちか。」 ため息を吐いた。 雪絵の田舎ではお年寄りが集まると古い言伝えを話してくれる。 中でも「かまいたち」はお年寄りの中では、稲刈りや畑仕事の最中にはあるある話で、普通に話されていた。 知らん間に手拭いが切れとった。 ズボンの裾がスパッとな。 手の甲を切られた、痛かったわ。 まさかそんな馬鹿な、とも考えたが、風が切る現象はないとは言えないらしいと大きくなってから知った。 旋風が起きて、気圧の違いなどでスッパッと切れる現象だったと何かで見たのを記憶している。 その現象の名を「かまいたち」というらしいからあり得る。 「それにしたって……田舎でも見た事なかったのに、ここでぇ?しかもこのスカート……これ、いいお値段だったのにぃ……。」 相手が人間なら怖いが弁償してと言える。 かまいたちでは弁償は期待出来ない。 はぁ、と肩を落とした。
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