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暫くは平穏な日々が続いた。
その日は大学の講義が午前中のみだったので、シフトをたっぷり入れてもらっていた。
お昼の賄いも出て、ラッキーと思いながら働いていると、店の電話が鳴る。
「え?風邪?」
(風?)
その言葉にドキリとした。
耳が店長の声に集中してしまう。
「そうか、うん、大丈夫。お大事にね?」
(お大事に……あぁ、風邪かぁ。)
はぁ、とため息を吐いてから、入って来たお客様に振り向いて声を出す。
水の準備をして運んで行き、戻って来ると店長に声を掛けられた。
「はい?」
「ごめん!延長頼めないかな?」
拝まれた。
今日はいつもより早く入っているから、十九時上がりの予定だった。
十九時に終わり、賄いを食べてから帰るという贅沢なシフト。
早く終わるけど、時間的には七時間、働いている。
だけど稼げる時には稼いでおきたい。
幸い明日は土曜日で講義は十一時からで、寝坊の心配はない。
「一人、体調不良で休みなとこに、今の電話で風邪引いたって。二人もいないのはきついんだ。お願いします!」
「いいですけど、何時までですか?秋田さんて、確か夜中までですよね?」
ファミレスは二十四時間営業。
いくらなんでも七時間働いた上に、休んだ秋田の代わりに夜中までいるのは辛い。
「女の子を流石にそこまでは…。二十一時まで!お願いできないかな?それならいつもと同じでしょ?だめ?」
「良いですよ。大丈夫です。その時間なら…。」
「助かるよ。ありがとう。頼むね。」
体調が悪い時はお互い様だし、夕方過ぎに入る時は二十一時まで働いているから、稼げるなら有り難いと考えて仕事をした。
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