二ヶ月後、八月

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暫くは平穏な日々が続いた。 その日は大学の講義が午前中のみだったので、シフトをたっぷり入れてもらっていた。 お昼の賄いも出て、ラッキーと思いながら働いていると、店の電話が鳴る。 「え?風邪?」 (風?) その言葉にドキリとした。 耳が店長の声に集中してしまう。 「そうか、うん、大丈夫。お大事にね?」 (お大事に……あぁ、風邪かぁ。) はぁ、とため息を吐いてから、入って来たお客様に振り向いて声を出す。 水の準備をして運んで行き、戻って来ると店長に声を掛けられた。 「はい?」 「ごめん!延長頼めないかな?」 拝まれた。 今日はいつもより早く入っているから、十九時上がりの予定だった。 十九時に終わり、賄いを食べてから帰るという贅沢なシフト。 早く終わるけど、時間的には七時間、働いている。 だけど稼げる時には稼いでおきたい。 幸い明日は土曜日で講義は十一時からで、寝坊の心配はない。 「一人、体調不良で休みなとこに、今の電話で風邪引いたって。二人もいないのはきついんだ。お願いします!」 「いいですけど、何時までですか?秋田さんて、確か夜中までですよね?」 ファミレスは二十四時間営業。 いくらなんでも七時間働いた上に、休んだ秋田の代わりに夜中までいるのは辛い。 「女の子を流石にそこまでは…。二十一時まで!お願いできないかな?それならいつもと同じでしょ?だめ?」 「良いですよ。大丈夫です。その時間なら…。」 「助かるよ。ありがとう。頼むね。」 体調が悪い時はお互い様だし、夕方過ぎに入る時は二十一時まで働いているから、稼げるなら有り難いと考えて仕事をした。
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