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c47c4c3c-9836-4d88-a5a2-3b02f52cbd34  ドニおじいさんはその夢のように美しい花を「つぼみ姫」と名付けて、それはとても慈しみました。ドニおじいさんは毎朝早くから、シュシュと一緒に森の中の住み家を出て、ゆっくり歩いて庭園にやって来ました。  王さまに頼まれたのはつぼみ姫のお世話でしたが、ドニおじいさんは他の花たちのお世話もしてまわりました。そうしていつもいちばん最後に、庭園の奥まったところで品よく待っているつぼみ姫のところへやって来ました。つぼみ姫のところに来ると、特に心を砕いてつぼみ姫の世話をしてくれました。それからつぼみ姫の隣のベンチに腰掛けて、お昼を食べたりおしゃべりをしたりして、長い時間を一緒に過ごしました。  つぼみ姫はドニおじいさんとおしゃべりをするのが何よりの楽しみで、また心のなぐさめでもありました。つぼみ姫には友達と呼べるような花は、ただの一本もありませんでした。なぜかと言えば、つぼみ姫を守るためにこの庭園は一般の人びとの立ち入りをかたく禁じていましたから、小鳥や蝶の他にはほとんど花園を訪れる者のいない退屈な日々を過ごすことを強いられた花たちは、いつもその不満をつぼみ姫にぶつけて辛く当たっていたからです。  花たちにとって、人間の賛辞ほど心をくすぐるものはありませんでした。特に、若くて美しい人々が、自分たちの咲く姿に感嘆のため息を吐くのを見ることほど気持ちの良いものはないというのに、ここにやって来るのは年取ったドニおじいさんひとりばかりで、花たちにしてみれば、おもしろみも刺激もないつまらない毎日なのでした。それで花たちは、不幸にもつぼみ姫のための庭園にいなければならない自分の境遇を嘆き、腹を立てていたのです。ですから、とてもつぼみ姫の友達になろうなどという気にはなれませんでした。そういう訳で、つぼみ姫にとっては、心を許せるのはドニおじいさんとシュシュだけだったのです。 dc98e09d-5d3d-407f-9582-81401d3218c3
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