それはまだ序章に過ぎなくて

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それはまだ序章に過ぎなくて

「……やの、茅野!」 突然名前を呼ばれて、ガクッと肘が太ももの上に落ちた。 むくっと顔を上げたら、クラスメイト全員の視線が私に集中していた。 「ゴールデンウィークはもう終わったんだぞ。 いつまでも休み気分でいるなよー」 「……はーい」 気だるい返事をしたら、私の席の周りの友人達が“バーカ”ってからかうように笑っていた。 ◆   ◆   ◆   ◆ 「里奈ー。お前今日、朝から寝てばっかじゃん」 休憩時間になるや否や、私の席に直行して来る男子が一人。 「だって眠いんだもん」 ふわぁとあくびと共に伸びをしてみれば、ツンツン頭のその男は呆れた顔をしながら私の机の上にドカッと座った。 「そういやお前、今日反対方向から学校に来てたけど、どこか寄って来たのか?」 「あぁ……私、引っ越したのよ」 「はっ? 引っ越した? いつ!」 「おととい……」 「ちょっ、俺なんも聞いてねーんだけど」 「じゃあ今言った」 「なんだよ、それ」 だって。 引っ越した理由とか引越先について話をするのが面倒だったんだもん。
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