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彼女を形作ったもの
海君の自転車の後ろに乗って到着した沢村邸は、夕方までそこに居たのに入る時に少し戸惑ってしまった。
もう二度と足を踏み入れることはないと思っていたから。
リビングの扉を開ける海君の後ろに続いて中に入ると、柔らかな照明の下、ソファーに腰掛けている陸君と空君の姿が見えた。
二人の姿はやけに懐かしくて、いとおしくて。
鼻の奥がツンとしてしまう。
「里奈ちゃんっ!」
私を見るやいなや、パタパタと駆け寄って来る空君。
私の腕を引くと、バッと私を抱き寄せた。
「里奈ちゃんのバカッ! もうすっごい心配したんだよー。
勝手に出て行くとかダメだよー。
里奈ちゃんがいないと、僕寂しくて死んじゃうー」
「空君、く、苦しいよっ」
ぎゅうぎゅう、と。
これでもかと私を締め付ける空君。
まじで息が出来ないんだけど。
「里奈……」
空君の肩越しに声がした方を見ると、陸君がせつなそうに私を見つめていた。
「今回のことは申し訳なかった……。
つらい思いをさせて、本当にすまない……」
「陸君……」
本当にみんな心配してくれてたんだね。
なんだか、心がほんわか温かい……。
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