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それは早朝だった。裕太は一瞬で目が覚めた。家中がもの凄い音を立てている。天井に吊るしてある電気がぐるぐると弧を描く。
裕太はベッドから放り出された。そのまま身動きが取れなかった。
・・・・
30秒ほどだっただろうか。
とても長く感じた。かなり大きな揺れだった。両親が一階から駆け上がってきた。もの凄い顔をして裕太の手を掴み、そのまま下へ連れていった。靴を持たせられ、そのまま玄関へと飛び出した。
裕太は訳が分からなかったが、外へ出た時に全てが分かった。周辺の住宅には大きな被害はなかった。
しかし、一本の電柱が激しく傾いていた。
それはまさに裕太の部屋の目の前の電柱だった。今にも倒れてきそうだ。
そして、電柱の下には、あのロボットがいた。塗装が剥がれ、ガラスは割れ、何かの液体が漏れている。ロボットは、倒れかけた電柱を背中で支えていたのだ。
「・・・・」
裕太は言葉を失った。
なんてひどいことをしてしまったのか。役に立たないからといって、箒で殴ったり、蹴飛ばしたりした。体はひどく痛めつけられボロボロだったのに・・・。
それなのに、最後の力で裕太を守ってくれた。裕太の目が霞んだ。本当に悪かった。君が全部守ってくれたんだ。
裕太は親が引き止めるのを振り払って、ロボットの近くへ行った。
ギスギス音がなる。頭のほうから、ピューピューという音がなっていた。裕太は言った。
「ありがとうーーーー!!!!!」
ロボットの顔の割れたガラスから、昨日の雨だろうか、雫がポタポタ落ち始めた。
それは止まることなく落ち続けた。裕太はその場で大声で泣いた。そして父親に抱き上げられ電柱から離れて行った。
それを確認したかのように、ロボットは崩れ去り電柱の下敷きになった。電柱はそのまま倒れ、裕太の部屋を突き破った。
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