2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
やまない雨が降る。
僕は呆然と、傘を持って立ちすくむ。
雨音がうるさい。
ああ、そうだ、雨音で聞こえなかった、なんて言っていますぐ君を連れ戻したい。
この場所は、僕らの特別だった。
どこまでまっすぐな道が続いていて、僕らはいつも気を抜けば見逃してしまいそうなベンチに腰掛けて、手を繋ぎながら、どうでもいい話をしていた。
本当に記憶からすり抜けていきそうな話をしていたから、僕は後悔している。
どうでも良くない話だって、もっとするべきだったのかもしれないって。
君のことが大好きとか、こっち向いて、キスをして、抱きしめたいとか。
そんなことを、大切な話を、僕らはどうして話題にしてこなかったのだろうか。
雨は、記憶をどこかに流れ出していくわけでもなく、水たまりの中に2人が笑い合っていた顔と悲しそうな僕の顔を映し出していた。
最初のコメントを投稿しよう!