一話

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一話

 窓から見える景色は確かに綺麗だった。見ようと思えば今でも見ることは出来るのだが4年間もこの部屋に閉じ込められていると変わらない外の景色を見るために無理をしようとする気もなくなるものだ。  そうーー。4年前のことだ。当たり前のように学校に通い授業を受けていただけだった、だけど変化のない日常なんて誰にもあり得ないんだ。授業中に急に気分が悪くなり意識の途絶える瞬間目に映ったのは何かに脅えている小さな傍観者たちだった。40人のクラスメイトの中から、いや、世界でも初の症例だという謎の病気に、僕だけが選ばれたんだ。  それから数週間は慌ただしかった。気絶してる間に地元の病院で様々な検査をされたようだが、結局何が原因か分からずただの熱中症みたいなものだと診断された。しかし両親は諦めずに都会の病院へと連れて行ってくれてそこで初めて事の重大さを僕たち家族は知ることが出来た。ただ分かったのは治すのが難しいというどうしようもない事実だけで、これから何度も検査などを重ね原因の特定と治療をしていくとのことだった。そのため僕はそのまま入院することになり、学校にも通えなくなった。  そうしてたまに来る友達も段々少なくなり誰も来なくなってから3年が経つだろうか、未だに病魔とは別れられそうもない。いや、未だに原因不明のため病気とも言えないままなのだ。感染することは無さそうだということでウイルスやそういった類のものでは無さそうだと担当の先生は言っていた。まだそんな段階のままだという現状と、これからもずっとこのままなのかという諦めに心まで支配されそうなそんな時だった。窓の外に浮かぶ女の子を見つけたのは。
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