私が書いた乙女ゲームのシナリオが勝手に書き換えられた時の話

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「いい、タエちゃん? 和泉さんが言ったことは――」  奈都と多恵は、まだ会議室の中で話しているようだ。  しかしその内容はおろか、奈都の声色さえ澄絵にはハッキリとは聞き取れなかった。  不安そうに立ちすくむ澄絵に、和泉は彼女が知りたがっているであろう事柄を告げる。 「捨石が言うには……『自分の方が、トーマのキャラクターを理解しているから書き換えた』とのことだ」 「えっ……」  多恵の方が理解している。シナリオライターである澄絵よりも、トーマのキャラクターについて。  自らが口にした内容を否定するかのように、首を横に振りながら和泉は続ける。 「けど、それは捨石が自分好みのセリフをトーマに言わせただけだ。俺も桐生も、あのセリフがトーマのキャラクターに合っているとは思ってない。だから……セリフは朝日さんが最初に考えたものに直させるよ」  和泉の言葉を聞いて、澄絵の中で張り詰めていたものが一気に緩まった気がした。  その場に崩れ落ちてしまいそうな安堵感から、深い溜息をつく。  それと同時に和泉の方も、呆れたような溜息を吐き出した。
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