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和泉が言った言葉の意味が分からず、澄絵は思わず小首をかしげる。
そんな澄絵に一歩近づき、少しだけ声を潜めて和泉は語る。
「俺は……朝日さんが書くシナリオが、前から好きだった。俺の目にはトーマもヒロインも、すごく魅力的に映っていて……それは、朝日さんの感性がシナリオに映し出されているからだと感じていた。ゲームを通して……俺は、朝日さん自身の魅力に触れていた」
澄絵の魅力。本当にそんなものが、自分にあるのだろうか。
けれど和泉の口ぶりからは嘘やおだては感じられず、澄絵は素直にその言葉を受け止めていた。
他ならぬ和泉に対して、澄絵の方こそ大人の男性としての魅力を感じていたのだから。
「私の……魅力……?」
「あぁ……今日のことだって、そうだ。ゲームを通じて、いつも朝日さんを見ていた。だから、トーマのセリフの違和感にも気付けたんだ。捨石が考えた、あのセリフには……俺は、何の魅力も感じられなかったから」
確かに思い返してみれば、最初にトーマのセリフを奈都に指摘したのは和泉だった。
いつも澄絵を見ていた――その告白に顔が熱くなるのを感じながら、純粋な喜びから澄絵は和泉の目を見つめていた。
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