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澄絵の言葉に、和泉は真剣な表情で向き合う。
自身に向けられた視線から目を逸らさず、澄絵も言葉を繋げていく。現在のありのままの自分、そして未来への決意を伝えるために。
「捨石さんには、私が思うトーマの正しい姿を伝えられていなかった……だから、これからもっとシナリオのことを勉強して……捨石さんにも納得してもらえるような恋愛ストーリーを生み出してみせます。それに、和泉さんにも――」
今日、知ったのはそれだけではない。
更にもっと大切な想いに気付くことが出来た。
ゲームの中ではなく、現実の世界において胸を焦がすだけの恋の物語があるのだと。
そして、その想いを寄せる相手と気持ちが通じ合っていることも。
「和泉さんにも……読んで、もらいたい……もっと、届けられたらいいなって思っています。私が思い描く……理想の恋愛を」
言い終えた瞬間、澄絵はすっきりとした心地で和泉の目を見ることが出来た。
和泉もまた、大きく頷いてみせる。澄絵の決意をしっかり受け取ったことが、彼女に伝わるように。
その眼差しは、無言の中に語る。
直に聞いた澄絵の想いは、シナリオを通して見てきた彼女の魅力と相違ないものであったと。
了
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