私が書いた乙女ゲームのシナリオが勝手に書き換えられた時の話

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「これ……見てもらえますか? 私がサーバーにアップしたシナリオファイルです」  澄絵に促されて、二人もパソコンの画面を注視する。  澄絵が書き終えたシナリオのテキストファイルは、他のスタッフとも共有できるよう社内サーバーの特定の場所に格納する決まりになっている。  そのサーバー上でテキストファイルを開いて、トーマのセリフを二人に見せる。 「……全然、違うセリフだな。前後の会話はゲームと同じなのに、トーマのセリフだけ書き換えられている」 「うん……こっちのセリフなら、ヒロインへの気遣いとかトーマの優しさが感じられるしOKだよ。だけど……」  問題は、どこでセリフが違ってしまったのか。  澄絵がシナリオをサーバーに上げた後は、そのシナリオを元にゲーム画面に映し出される演出が施される。  演出を入れ終えたファイルが再びサーバーにアップロードされると、そのファイルをアプリとして実行できるよう加工される。  奈都がスマホで見せてくれたのが、その加工されたデータだ。  澄絵がシナリオを仕上げてから、実行データが作られるまでの工程。その中でセリフの書き換えを出来るタイミングがあるとすれば、それは一体どこになるのか。
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