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「……捨石さん?」
澄絵が呟いたのは、シナリオに演出を入れる担当の捨石多恵の名前だった。
多恵が演出を入れる際に、セリフの改変までしたのではないか。
その推理に澄絵が行きつくより早く、奈都と和泉は多恵の席へと移動していた。
「あっ……!」
二人が多恵に声を掛ける姿を見て、澄絵は冷や汗が出るのを感じた。
まだ、多恵がセリフを書き換えたとは限らない。
憶測だけで多恵を問い詰めたりしては、彼女に悪いと考えていた。
その気持ちは、多恵が発した言葉によって立ち消えていった。
「ハイ! 私が考えました! エモくないですか~?」
日頃から声の大きい多恵だ。離れた場所にいる澄絵の耳にまで、その声はハッキリと届いた。
悪びれた様子も無く、やけに明るく話しているのが遠目にも分かる。
その光景に、澄絵は強いショックを受けていた。
自分が自信を持って書き上げたシナリオが、勝手に書き換えられたからだろうか?
それだけではない。大きな不安と喪失感が、澄絵の胸を巣食ってどんどん膨らんでいく。
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