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ニキビ
ところが二十歳を過ぎてからは、肌の調子がすっかり落ち着きニキビは完治した。化粧をすると、可愛いと褒められるようにもなった。容姿に自信を持ってからは、ニキビ面の高校生を見かけると気の毒な気持ちになった。
そして三十歳になった現在、私はニキビ面の男の妻である。
明け方、カーテンの隙間から漏れた朝陽が夫の肌を照らすと、クレーターがはっきりと浮き出る。夫は自分の肌質を気にしていないと言うが、よく鏡の前で肌を凝視している。それを見るたび、妙な優越感が湧き出て、愛しく感じる。ニキビ面だから彼を愛しているわけではない。ただ、彼がニキビ面じゃなければ好きにはならなかったかもしれない。
路地裏で私をののしった少女は、ある意味で正しかったのだ。
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