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「そういうところよ、あんたがいいって思ったのは。簡単にジェイを変えることなんか誰にもできない。私にだってね。でも違う考え方っていうのを見せたいの。いつかきっとジェイの役に立つ。年齢的にはあの子ももういい大人なんだから」
途端に優作は反発した。
「そこ、俺には分かんねぇ。俺も言われる、大人になれ、年を考えろって。常識だとか、世の中のことだとか、そんなことも勉強しろって。でもそれ、俺にはたいして役には立たねぇし、そういうのに助けられたこともねぇ。俺以外はみんな大人なんだろうけど、それと俺の違いってどれほどのもんなんだか俺にはちっとも分かんねぇです。まして人に教えるなんて芸当」
ありさは笑った。
「そういうのを教えろって言ってんじゃないの。あんたに無いものを要求しちゃいないわ」
(うわ、お嬢、身も蓋もねぇ)
だが優作はほっとした顔になった。
「ならお嬢はなにを俺に求めてんですか?」
「中身はなんだっていいのよ。そうね、あんたが暇なときや時間のある時、どうやって過ごしてんのか。まずそういうの、ジェイに見せてあげなさいよ。一緒に過ごしてやってほしいの。ジェイの繋がりって狭いわ。この一家とR&Dに関係する範囲。それしかない。私たちが入り口でいいから他の世界を見せてあげたい」
「俺じゃなくっても」
「あんたにもいい刺激になると思うのよ、ジェイと一緒に過ごすことって。時間を決めるわけじゃないし、こうしなさいっていう目標になるわけでもない。ジェイにはっきりものを言えるあんただからこそお願いしたいの」
「……テルさんも一緒ってことですよね?」
(わ、やめてくれ!)
「それは無し」
「だってテルさんがアドバイザーっていうのなんでしょ!?」
「一緒に過ごすのはジェイとあんたと二人。テルには単なる相談だけ。どうしても困った時によ。最初っから相談するんじゃないの。取り敢えず、土曜のことはテルに相談なしで。いいわね?」
そういう経緯で優作は悶々とすることになった。土曜が過ぎないとテルに相談できない。
(じゃ、土曜はどうしろってんだよ)
それで直にジェイに聞いてみようと思ったのだ、単刀直入に。
「勉強したいとしたらどんなことがある?」
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