優作の悩み

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  「……じゃ、英語」 「え、えいご、だと!?」 「だってみんなバカにするんだ、ハーフのクセに英語喋れないって」 「俺にそんなこと言うな! 俺ぁ日本語だって怪しい!」  真面目に聞くつもりだった蓮は吹き出してしまった。 「だって…… 他にって思いつかない」  優作はぶつくさと文句を呟いた。 「いうに事欠いて英語だと? 日本にいて外国の言葉覚えてどうすんだ。道聞かれたときしか役に立たねぇじゃねぇか」 「そういう時、優作さんはどうするの?」 「そういう時?」 「外人さんに道聞かれた時」 「お廻りんとこに連れてくか、行き先に連れてく。一番手っ取り早い」 「すごい! 放ったらかしにしないんだね!」 「おい、聞かれて知らん顔ってのは人の道に外れてんだろ! お前はどうなんだよ、放ったらかすのか?」 「俺、すぐに本屋に行く!」 (本屋?) 優作の答えは理にかなっている。だがジェイは何を言いだすのか。蓮も興味津々だ。 「それで英会話の本買って、一生懸命教える」 「バカか、お前! 日が暮れちまう、そんなことしてたら!」 (ん? こういうとこか? お嬢がジェイに教えろって言ってんのは)  少し正解に近づいた優作。だからといって土曜の行動にどう役立てればいいのか。 (お嬢は俺がどう過ごしてんのか見せろって言ったよな……) 「分かった。大将、とにかく土曜はジェイと外に出ます」 「お前なら安心だ。任せるよ」 「蓮は来ないの?」 「三途はお前と優作2人で過ごせって言ってるんだよ。楽しんで来い」  ジェイはちょっとワクワクしてきた。蓮が一緒じゃないのは寂しいが、こういうことは初めてだ。449bdb49-59e0-41fc-9ce4-f7fc6f38ec0e(優作さんと2人で勉強…… なに教えてくれるんだろう!)  一方、優作は一大決心をしている。 (ジェイをあそこに連れて行こう) 誰も知らない優作の休日の行動。それにジェイを連れて行く。それなら少しはお嬢の言っていることに近づくかもしれない。  
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