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優作の悩み
「こんばんは」
「優作さん! 1人なの?」
「1人」
口数が少ない。優作にしては珍しい。カウンターに座って「なんでもいいから食べたい」と蓮に任せた。
「幾らにする?」
「……財布見るから待って」
財布を開けてあれこれ考えている。
「1,070円」
「不思議な値段だな! いいよ、待ってろ」
「優作さんの所に行っていい?」
「混んでないからいいぞ」
そう言われて優作の隣に座った。今日は座敷で商談が2件進行している。4時からも2件あった。12月が近いから商談という名で忘年会も兼ねているらしい。そのどれも役職が上の方の人たちばかりだから普通の忘年会よりも大人しい。
「どうしたの? 何かあったの?」
こんなに塞ぎ込んでいるのを初めて見る。だいたい優作は物事を深くは考えないから考え込むこと自体がほとんど無い。
「ジェイ、勉強したいとしたらどんなことがある?」
「勉強? いきなり何?」
「いいから答えろよ」
「そう言われても……」
知りたいことなら確かにある。けれどそれは勉強とは違う。例えば『幸せの形』。最近考えてしまうことだ。どうしたら蓮も自分も一緒に幸せになれるのか。けれど優作の質問は唐突過ぎて答えようがない。
「なんだ、無ぇのか……」
溜息が出た。
「優作さんが溜息ついてる!」
「なんだよ、そんなに驚くことか?」
「驚くよ! 誰がついても優作さんはつかないもん!」
「……ひょっとして今の、バカにしてるか?」
「なんで?」
「……いい。お前とこの言い合いが始まるとめんどくせぇことになるから」
「どうしてめんどくさいの?」
「ほらな? こういうのがめんどうくせぇってんだよ」
そしてまた溜息。
「その溜息、俺が関係してるってこと?」
「お前が関係してんじゃねぇよ、俺がお前に関係してんだよ」
「優作さんの言ってること、よく分かんない」
「だろうな。……お嬢もまったく…… どうしろってんだよ」
最初以外は全部呟き。ジェイには何を言ってるのか伝わっていない。
「お待ち! いったいどうしたんだ? 明後日は三途川家の貸し切りになってるのに」
優作の前に料理を置いて、塞ぎ込んだ顔を見た。今日は水曜。金曜の午後10時から三途川一家がここで騒ぐ。
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