ジェイと蓮の愛情物語 －その４－ 完

優作の悩み

「土曜のこと」
「土曜、何かあるのか？」
「金曜は俺はここに泊まって、土曜はジェイとどこか出かけることになってるんだよ」
「そうなの？」
　ジェイはきょとんとしている。
「お前と二人でか？」
なんの話か蓮にも分からない。
「あれ？　お嬢から何も聞いてない？」
「三途？　聞いてないが」
「マジかよ……」
「いったいなんの話だ？」
「お嬢がね、いい機会だから土曜ジェイと出かけろって」
「何がいい機会なんだ」
「ジェイが……なんだっけ……　大きくなって……　深くなるように頑張るっていう勉強をさせろ……　確かこんな感じ」
「そう言えば前に三途さんが言ってたよね！　優作さんならいい先生になるって」
　蓮はその話を全く知らない。それは蓮の誕生日プレゼントに革ジャンを買ってきた日のことだ。
「思い出したか」
「うん！　それで何を教えてくれるの!?」
「知るかよ！　それが分かりゃ苦労しねぇって！」

　蓮はさっきの優作の言葉とありさの考えそうなことを結び付けてみた。
（成長、人間が深くなる、頑張るのを勉強……）
　やはり結びつかない、と降参した。だいたい今のジェイに『頑張れ』というのは酷な話だと思う。
（そうか、こいつら三途の話を聞き違えたんだな？）
「ゆっくり食べててくれ。ジェイ、店頼む」
「蓮は？」
「さっきシャツに水を被ったから着替えてくる」
「分かった」

　２階に上がってありさに電話をかけた。
『はい。蓮ちゃん？』
「俺だ。今優作が来てるんだが」
『あら、偉いじゃない。もう行ったの？』
「どういう話か教えてくれ。下でジェイと悶々としてるんだ」
『なにそれ。全くあの子は！』

　話はちょっと遡る。といってもほんの僅かだが。１１月１４日金曜日。優作はとんでもないことをお嬢に言いつかった。買物をしたお嬢を迎えに行ってお嬢に命じられた（と思っている）件のことだ。
『人の先生になるって言うのはとてもいいことよ。すごく勉強になる。蓮ちゃんに頼んどくから時々ジェイと行動しなさい』