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テルにしたら、『結局お嬢に聞いたのかよ!』という優作からの逆糾弾は避けたい。それもありさに告げてある。
「余計な心配しなさんな。それくらいのこと分かってるわよ」
やはりお嬢は頼りになる。先のことも見通している。
「こんにちは! 爺じ、いる?」
こんな言い方をありさがする時には “孫付き” の押しかけだ。爺じはすっ飛んで出てきた。
「おぅ、穂高!」
「爺じ、こんにちは」
「そうだった、こんにちは。大きくなったな!」
「爺じ、最後に会ったのは日曜だよ。そんなに大きくなり続けたら大変なことになっちゃうよ」
「お前は大物だから人間的にも成長が早いってこった」
「僕の人間性ってにょきにょき大きくなるんだね」
ありさはこんな会話はいつも放っておく。穂高は言葉以上に爺じを尊敬しているし考える子どもだから気にならない。
双葉からも手を放してさっさと奥に行った。
「今日は双葉と一緒に爺じに『やっかい』になるみたい。ママにはきっと何かの『もくろみ』があるんだよ」
「そうかい。じゃ今日はどうするか?」
「『かいごう』は今日は無いの?」
「無ぇよ。2つばかりあったが今消えた」
「爺じってすごいよね。『わんまんしゃちょう』っていうのだよね」
「まぁな」
誇らしそうに言う爺じ。
「爺じの『そしき』って、爺じが右って言えば右向くってイチおじちゃんが嬉しそうに言ってたけど本当?」
「本当だとも。爺じが全て牛耳ってるからな」
そんな爺じも次に放った穂高の冷静な言葉には答えられなかった。
「一歩間違ったら『ブラックきぎょう』ってヤツなんだ。爺じ、『やくにん』や『サツ』っていうのに気をつけてね」
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