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和哉がバスルームから出てくると、コーヒーの香りがした。
「おぉ、いい匂い」
「コーヒー、淹れましたからどうぞ」
嬉しいね、と口をつけると酸味が先に来た。
(モカ、か)
酸味より苦味を好む和哉には、苦手なコーヒーだ。
しかし彼は、笑顔を作った。
「美味い。ありがとう」
その言葉に、素直に喜ぶ翼が可愛い。
「僕もシャワー浴びてきていいですか?」
「どうぞ、ったって。俺の部屋じゃないのにな」
笑いながら、翼はバスルームへ消えていった。
カップを片手にキッチンへ入ると、そこにはコーヒーを淹れる器具類が揃えてあった。
「ちゃんと、ドリップしてくれたんだ」
そう思うと、モカでも嬉しい。
翼の心遣いに感謝しながら、和哉はそれらを丁寧に洗った。
カップも、ちゃんと片付けた。
終わる頃に、翼が風呂からあがって来た。
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