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「部屋着、それでいいですか? サイズ、合いますか?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
別れたという彼が、着ていたものだろう。
ただ和哉は、それについては一言も触れなかった。
そして、そんな彼を、翼はやはり優しいと感じた。
(何も訊かないんですね、渡さん)
何も訊かず、何も知らないのに、ただ優しい和哉。
この人なら、今の僕を慰めてくれる。
この、どうしようもない心の渇きを、癒してくれる。
そう、翼は感じ取っていた。
「あの。もう寝ましょうか」
「ん? ああ、さすがに0時回ったら寝なきゃな」
明日は土曜日だから、ゆっくり眠れるな、と和哉は笑ったが、翼は笑わなかった。
「それで、あの。一緒に、ベッドで寝てくれますか」
「いいよ」
抱いてくれますか、とは言わない翼だ。
だが、その気持ちは眼差しで汲み取れた。
和哉は翼の後について、寝室へと入って行った。
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