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翼の顔を見た和哉は、一瞬とまどった。
目は赤く、瞼は腫れ、眠れなかったのか隈までこしらえている。
「おはようございます!」
それでも翼は先客が和哉と解ると、明るい声で挨拶してきた。
(無理してるんだろうな)
心の中でそう考えると、和哉は淹れたてのコーヒーが入ったグラスポットを差し出した。
「よかったら、飲む?」
「え、結構です。せっかく渡さんが淹れたコーヒー……」
「俺の淹れたコーヒーを、飲めないっての?」
「いえ! そういう意味じゃなく!」
真面目な翼は、からかうと実に可愛い。
「また淹れるから、いいんだ。ほら」
和哉はそう言って、ポットのコーヒーを翼のマグカップに注いだ・
「ありがとうございます」
湯気が、心まで温めてくれるようだ。
翼は、ほっとした心地で肩の力を抜いた。
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