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「勝手にキッチン使って悪かったけど、腹が減っちゃったから。ごめんね」
「いえ、いいんです。でも、あの、その……」
「シャワー、浴びて来るといいよ。峰松くんの分まで、朝食用意しとくから」
「すみません」
(渡さん、いつもの渡さんだ)
シャワーを浴びながら、翼は考えていた。
昨夜は『翼』って、呼んでくれたのに。
「いや、それでいいんだ。僕と渡さんは、恋人でも何でもないんだから!」
一夜限りの、契り。
しかし、そう思うと胸が疼く。
これでお終いにして、月曜日からは何事も無かったかのように会社で顔を合わせるには、情が深すぎた。
「どうしたんだろ、僕」
もしかして、渡さんのことが好きに……?
「いや、駄目。失恋したばっかりなのに、もう好きになったとかありえない」
翼はシャワーの栓を閉めると、バスルームから出ていった。
荒っぽく体を拭きそして服を着ると、和哉の待つキッチンへと向かった。
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