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和哉の焼いた固めの目玉焼きは、半熟ばかり食べている翼には新鮮だった。
「美味しいです!」
「ありがとう」
トーストにサラダ、ヨーグルトにフルーツ。
そして温かなコーヒーを飲み終えながら、翼は和哉に訊いてみた。
「今日、この後どうされますか?」
できれば、一緒にいて欲しかった。
外へ出て、映画でも……。
「帰らなきゃ。ピピちゃんの餌やりとか水替えとか、あるからね」
「そうですか……」
しかし、目に見えて落胆する翼を放っておくほど、和哉は意地悪ではなかった。
「よかったら、家に来る? ピピちゃんに会いに」
「いいんですか?」
じゃあ、着替えなきゃ。
そう言って、途端に元気に動き出す翼が、和哉には微笑ましかった。
(ああ、俺も若い頃はあんな風だったのかなぁ)
そんなことを考えながら、椅子から立ち上がった。
昨夜の雨は、すっかりやんでいた。
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