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「峰松くん、よかったら夜まで居られる?」
「渡さんのお宅に、ですか?」
うん、とうなずく和哉だが、夜の8時くらいに見せたいものがある、と言う。
(お泊りのお誘いじゃないんだ……)
昨夜の情事を思い出し、耳を火照らせた自分が恥ずかしい。
(渡さん、いや、和哉さん。すごく優しくて、素敵だったな)
またこの人に抱かれたい、と思える相手に出会うのは初めてだった。
「どうしよう。会社に車取りに行こうかな」
昨夜は翼と飲んだため、社に置きっぱなしにしてあるマイカーを、和哉は考えていた。
妄想に耽っていた翼は、その言葉に我に返った。
「い、行きましょうか。雨も上がりましたし」
「峰松くんも、来る?」
一も二もなく、はい、と答えた翼だ。
今日は一日、和哉の傍に居たかった。
「ここで留守番して、昼寝しててもいいんだけど」
「いえ、一緒に行かせてください」
「休みの日に会社に行きたがるなんて、変わってるなぁ」
笑う和哉の眼差しは、優しかった。
その笑顔に、どんどん翼は惹かれて行った。
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