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結局日中は和哉の車でドライブをして、郊外で美味しい昼食を摂ったり、色づき始めたアジサイの花を見に公園へ行ったりして過ごした。
夕食はデパ地下のお惣菜を買って来て、缶ビールで宅飲みだ。
「今日はあんまり酔っちゃダメだよ」
「はい。8時に、イベントがあるんですよね」
イベント、なんて大げさじゃないけど、と和哉は照れた。
だが、翼には見せておきたいものが、和哉にはあった。
今の翼に伝えておきたい言葉と共に、見せたかった。
7時30分を回る頃から、翼はそわそわし始めた。
何だろう。
渡さんが僕に見せたいもの、って?
「暗くなったな。もう、いいかな」
「まだ8時になってませんけど」
「いや、これくらい暗くなったら見えるから」
「?」
暗い方が見える、なんて。
解らないまま、翼は和哉に誘われて外へ出た。
家の周囲を回り、裏手の小川へやって来た。
闇が広がるばかりで何も見えないが、しばらくすると目が慣れて来た。
そこで翼は、生まれて初めて見る光を捉えた。
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