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「最近の若い子は、難しい曲を歌いこなすなぁ」
拍手をしながら、和哉は翼に感心していた。
大声を出して発散できたのか、翼は頬を紅潮させてマイクを渡してきた。
「はい。次は渡さんの番ですよ」
「あんなに上手に歌われた後じゃ、やりにくいな」
それでもカラオケは苦手ではない、和哉だ。
自分が20代の頃に流行った曲を、どんどん披露していった。
「あ、この曲聞いたことあります」
「去年、人気アイドルがカバーしたからね」
一緒に歌おう、と和哉はグラス片手に翼の肩を寄せた。
彼の手にも水割りを持たせて、ほろ酔いのいい気分にさせて歌った。
もうすぐ、退室時刻が来る。
その前にもう一度、翼に何があったか訊いてみよう。
ご機嫌で歌いながらも、そのことは忘れていない和哉だった。
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