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「焦ってます?」
「いえ、心底腹が立っただけです」
「怖いなぁ、杵築先生」
苛立ちを隠しもしない。随分と誠にご執心のようだ。
「選ぶのはあんたじゃない。誠ですよ」
さらりと誠の髪を撫でる。
「ん……」
周りで男二人が啀み合っているというのに、渦中の本人は未だにすやすやと眠っている。
でも誠はそれでいい。
揺れ動いたり、悩んだりして苦しまなくて良いんだ。
ただ幸せになれるほうを選べばいい。
残酷なほど容易なことだ。
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