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 口車にのせられたような形だが誘拐事件の捜査協力をすることになってしまった。逃げ出すことはかなわない。本気を出せば舟瀬が寿命でくたばるまで待つという方法はある。しかし百年近く拘束されるのは絶対イヤだし、下手したら爺ちゃんの死に目に会えないかもしれないというのもイヤだった。なんとかして迅速に真犯人を見つけだす必要がある。  しかし何をすればいいだろう。  舟瀬は知り合いの幽霊を教えてくれと言ってきた。 「その知り合いが犯人かどうかは分からないが有力な目撃情報が得られるかもしれない」 「霊感強いんだったら幽霊の場所くらい気配かなんかで分かるんじゃないの」 「何言ってるんだ、いっぱしの幽霊ならその気配だって消せるじゃないか」 「どうせ私は未熟者よ」  おキクに知り合いの幽霊はいない。しかし街のどこに幽霊がいるかは知っていた。  困ったときに駆け込めるよう爺ちゃんから教えてもらっていた幽霊の居場所。今まさに困っているわけだからこのタイミングで訪ねるのは間違いじゃない。しかし誘拐犯として疑いをかけてしまう上に霊感の強い人間に居場所を教えてしまうというのは少し心苦しくも思われた。 「私の知る限り街にいる幽霊は三人。『花子さん』、『ろくろ首』、『口裂け女』よ。正直会ったことは無いからどんな人かもどんな力を持っているかも分からない」 「へぇ、みんな女性か」  ひょっとしたら爺ちゃんがおキクに配慮して教えてくれていたのかもしれない。 「ここからなら誰が一番近いんだ?」 「花子さん、かな。商店街の裏にある蒼山小よ」 「まだ陽も落ちていない。今からさっそく行ってみよう」  二人は交番を後にした。
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